「笑ってた、って……」
クロエさんは、また視線をテーブルに落とす。
子供みたいに膝を抱えると、ボルドーのペディキュアが見えた。
「七星さんとは、普通に話していただけですよ?」
反応は何も返ってこない。
「七星さんと共通点がたくさんあって、盛り上がったというか。
通っている専門学校が同じだったんです」
やっぱり反応はない。
それなら自分も同じ学校だ、とか返してくれると思ったのに。
「映画も小説も、七星さん、いろいろ知ってて……。
こんなに共通の話題で盛り上がれる人って、あまり…いない、から………」
悪い事はしていない。
ただ話して、ただ笑った。
それだけの事。
それに七星さんと話しているように、はっぱをかけたのはクロエさんだ。
だけど、クロエさんの触れてはいけない傷口みたいな、痛々しい横顔をどうにかしたくて。
言い訳のように言葉を並べてみたけど、並べれば並べるほど言葉は薄っぺらくなった。
「共通点が、あればいいの?」
やっと口を開いたクロエさんに、冷たい手で手首を掴まれる。
それに気づいた次の瞬間には、クロエさんの茶色とグリーンの眼の中に仰向けの自分が映っていた。
あっという間過ぎて自分の置かれた状況に、理解はなかなか追いついてこなかった。
その眼をただ、下から眺めていた。
「やっぱり契約破棄なんて、させない」
茉莉香に似た唇が悪意を吐く。
だけど、痛みと怒りを伴ったような眼に逆らおうと思わなかった。
どうしたらそれを柔らげられるのか、自分にはわからないから。
それならもう、流れに任せるだけだ。
悪意を吐いた唇を首筋に押し当てられると、もう自分の身体は自分のものじゃなくなった。
クロエさんは、また視線をテーブルに落とす。
子供みたいに膝を抱えると、ボルドーのペディキュアが見えた。
「七星さんとは、普通に話していただけですよ?」
反応は何も返ってこない。
「七星さんと共通点がたくさんあって、盛り上がったというか。
通っている専門学校が同じだったんです」
やっぱり反応はない。
それなら自分も同じ学校だ、とか返してくれると思ったのに。
「映画も小説も、七星さん、いろいろ知ってて……。
こんなに共通の話題で盛り上がれる人って、あまり…いない、から………」
悪い事はしていない。
ただ話して、ただ笑った。
それだけの事。
それに七星さんと話しているように、はっぱをかけたのはクロエさんだ。
だけど、クロエさんの触れてはいけない傷口みたいな、痛々しい横顔をどうにかしたくて。
言い訳のように言葉を並べてみたけど、並べれば並べるほど言葉は薄っぺらくなった。
「共通点が、あればいいの?」
やっと口を開いたクロエさんに、冷たい手で手首を掴まれる。
それに気づいた次の瞬間には、クロエさんの茶色とグリーンの眼の中に仰向けの自分が映っていた。
あっという間過ぎて自分の置かれた状況に、理解はなかなか追いついてこなかった。
その眼をただ、下から眺めていた。
「やっぱり契約破棄なんて、させない」
茉莉香に似た唇が悪意を吐く。
だけど、痛みと怒りを伴ったような眼に逆らおうと思わなかった。
どうしたらそれを柔らげられるのか、自分にはわからないから。
それならもう、流れに任せるだけだ。
悪意を吐いた唇を首筋に押し当てられると、もう自分の身体は自分のものじゃなくなった。


