一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「あの…七星さんは、俺と…クロエさんの…その、契約って……聞いたんですか?」

「ああ、えーっと…一か月ここで暮らす、クロエさんの被写体になって撮られる、人肌恋しくなったら…ってやつっスよね?」

七星さんが一つずつ指を折りながら契約内容を口にすると、やっぱり恥ずかしかった。

「……はい。
あ、まだ正式な返事はしてないですよ?!」

必死になってそう主張したが、七星さんは気に留めていないようだった。

「オレ、アオイさんが羨ましいっス」

「羨ましい?」

「だってクロエさんの被写体になれるって、それだけ興味持たれてるって事っスから。
魅力的な人間、って事っスよ。
クロエさんが自分から個人に、こうやってモデル依頼した事って、オレが知る限りはないっス」

「じゃあ、1番目と3番目の………」

「一緒に暮らすことと、人肌云々(うんぬん)ってやつっスか?」

クロエさんに会話が聞こえていないか心配になってキッチンの方を見ると、クロエさんは料理に集中していて、まったく聞こえていないようだった。

「一緒に暮らせば被写体との距離も縮まるし、いつでも撮れるし、便利っスよね!」

便利……。

そう言われれば確かにそうだ。
クロエさんは、抱きたい時に抱けないのが理由だと言ったけれど。

「3番目はウケるっスよね!」

「ウケ、る…?」

「クロエさんもそういう事を言って、人をからかうんだなーって!
あずささんも、ウケるわーそれにしてもあの2人が一緒に暮らすって萌えるわー、って言ってたっス!」

どうやら、俺以外はこの契約に対してアレコレ思っていないようだった。

でも、3番目の契約は、からかっているわけじゃない。

セックス…ではないけれど、抱き締めるっていうのは、本気だ。