一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

ちぃちゃんのお腹を撫でていると、クロエさんがやってきて、その後ろには今朝の男の人がいた。

「初めまして!
オレ、クロエさんのアシスタントやってる、七星(ななほし)って言います!
よろしくお願いします!」

ニカッ、という効果音がぴったりの笑顔で、七星さんは挨拶をした。
声の大きさはクロエさんの3倍…いや、4倍くらいあって、改めて近くで見た顔は、やっぱりナナセちゃんに似ていた。

「初めまして、アオイと言います。
えっと……」

自分をどう説明して良いのかわからず、中途半端に口を開けた状態で硬まってしまう。

「アオイさんの事は、あずささんから聞いてます!」

「あずささんから…?」

あずささんは七星さんに、どう説明したんだろう。
酔っ払って怪しい契約をして、初対面の人間の家に泊まった奴。
そんな風に思われているんじゃないのか、心配になった。
だけど事実をまとめると間違いはなく、その通りだ。


「ナナ。早いけど、うちでご飯食べてく?」

「良いんスか?!
やったー!食べていきます!
オレも手伝います!」

「大丈夫」

「そっスか?
まぁ確かに、オレじゃ足手まとい…。
んー…じゃあアオイさん、ご飯が出来るまでオレと話しましょう!」

「え…いや、俺は……えっと……」

七星さんの勢いに押されてしまい、助け舟を求めてクロエさんの方を見る。

「ナナがうるさいから嫌、だって」

「えー。アオイさん、オレ、うるさいっスか?」

「いや、そんな事は言ってないです…!」

「じゃ、話しましょ!」


ゴムを咥えて髪をまとめながら、クロエさんは意地悪に薄っすらと微笑んだ。
クロエさんの(てのひら)で転がされている。

でも、目の前でニコニコしてる七星さんを見たら、転がされてても良いかと思えた。