一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

それから俺とナナセちゃんは毎日のように一緒に帰って、週末はデートした。
茉莉香以外の人と遊ぶのは新鮮で、違う自分になれた気がした。


もしかしたら、一緒にいるうちにナナセちゃんを好きになれるかもしれない。

俺はとても愚かで、とても浅はかな事を考えるようになった。

ナナセちゃんは良い子で、欠点も見つからないし、俺を好きだと言ってくれる。
俺がナナセちゃんを好きになれば誰も傷つかない。
この時は本気でそう思った。
思った、というより、思い込もうとした。


何度目かのデートで、手を繋いだりした方が良いのかと思って繋いでみた。
ナナセちゃんはびっくりして丸い目を更に丸くした。
顔を真っ赤にして、「緊張で手が汗ばんじゃうんです、いつもはこうじゃないんです。ごめんなさい」と何度も言った。

それを聞いて申し訳なくなった。

ナナセちゃんは手に汗をかいちゃうくらい緊張して、動揺しているのに、俺は何も感じなかった。

茉莉香に少し似たナナセちゃんの目を見る度に、もしも茉莉香だったら――と、最低な事を考えているだけだった。

こんな最低な、汚い人間なのに。
どこへ行っても、何をしてても、ナナセちゃんは楽しそうで、幸せそうで。


自分のやっている事が後ろめたくて、ナナセちゃんの目を見れなくなっていった。
自分なんかと目を合わせたら、ナナセちゃんのキラキラした目を汚してしまいそうで。

もちろん、ナナセちゃんに触れることも出来なくなった。
連絡も次第に返さなくなった。

学校で会えば、ナナセちゃんはいつだって変わらずに笑ってくれたけど、気付いていたと思う。