一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

人に教えるのは上手い方ではないし、数学の成績が特別良いわけでもない。
でもナナセちゃんは俺から教わりたい、と言って譲らなかった。

頼ってくれる後輩はやっぱりかわいくて、どうやって教えたら良いのか自分なりに頑張って考えた。
茉莉香から「自分が代わろうか?」と提案もされたけど、断った。
引き受けたからには自分がやりたかったし、ナナセちゃんをがっかりさせたくなかった。



「アオイ先輩のお陰で数学の成績がすごく上がったので、お礼をさせてください」

ナナセちゃんはそう言って、テスト明けの週末に、パフェが何種類もあるお店に誘ってきた。

そのお店には俺が好きなチョコミントのパフェもあって、パフェのてっぺんにはチョコブラウニーとミント味のマカロンがのっていた。
あの頃は今よりもチョコミントのスイーツは珍しくて、感動したのを覚えてる。

ナナセちゃんはどのパフェを選ぶのかと思ったら、サンドイッチを注文した。
パフェじゃないのかと聞くと、「しょっぱいものが食べたい気分なんですよね。昨日、甘い物食べすぎちゃったせいかな」と言って笑った。
それを信じた俺も笑った。

本当はナナセちゃんは甘い物が食べられなかった。
後日、友達からそれを聞いて、ようやく気付いた。

チョコミントが好きで、テスト明けにはパフェを食べるのが自分へのご褒美で、スイーツならブラウニーやマカロンが好き。

それは全部、自分がナナセちゃんに話していた事だった。