一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

手紙が添えられていた青いパターンの丸いお皿には、彩りよく朝食が盛り付けられていた。

小さくて丸いおにぎりは、梅干しがのったものと、枝豆と昆布が和えられたものの二種類。
くるくると綺麗に巻かれた、鮮やかな黄色の卵焼き。
その隣には、ほうれん草のソテーとプチトマト。
ほんのりと甘い鮭の西京焼きに、蓮根(れんこん)のきんぴら。

こんなに食べられるか不安だったのに、あっという間に食べ終えた自分に驚く。
固形物がこんなに入ったのが久しぶりだったせいか、身体は重く感じたけれど、それは決して悪い感じではなかった。


「君のご主人様は、お料理上手なんだね」

そう話しかけたけど、ちぃちゃんは眠たそうな顔で行ってしまった。
食事中はあんなに足元でじゃれてきたのに。
気まぐれだけど、それもそれで可愛いのかもしれない。
いや、だからこそ、より可愛いんだろう。
こっちに近寄ってきたと思ったのに離れたり、離れたと思ったのに近寄ってきたり。

自分はそんな風には出来ない。

離れたら、どうなるかなんて保証はどこにもない。

そばにいたからって、永遠になれるわけでもないけれど。


自由に振舞える猫がうらやましい。



そういえば、さっきクロエさんと一緒にいた男の人は助手とか同業者とか、仕事関係の人なんだろうか。
笑い方や、薄っすらしたそばかすとか、少しカールがかった髪がナナセちゃんに似ていた。

高校で、少しだけ付き合っていたナナセちゃん。