「行ったら、いつ帰ってくるか、わからないよ…。
一年か、二年か……。
余計なお世話かもしれないけど…アオイが心配だし……。
オレ自身が…一緒にいたい」

クロエさんが、こんなに気持ちを話してくれるなんて思わなかった。
嬉しさと、気持ちを揺らがせないで欲しいという思いで、いっぱいになる。

「ちゃんと、一人でも頑張りたいんです。
クロエさんから、たくさん貰ってばかりじゃ嫌なんです」

「貰ってばかりなんてことない。
アオイのお陰で、ちゃんと眠れるようになったし、すごく……気持ちが楽になった」

「だったら尚更、行ってください」

「けど……」

「何かを諦めて一緒にいるみたいな関係には……なりたくないんです」

本当は、イギリスになんて行って欲しくない。

もっとクロエさんを知りたいし、自分を知って欲しい。
すれ違っていた気持ちだって、やっと分かり合えたばかりだ。

だけど、ちゃんと送り出さなくちゃ。

きっとそれが、いま自分に出来る唯一の事だから。

「宇宙に行くわけじゃないんですから。
イギリスと日本なら飛行機だと……」

「半日」

「遠いけど、会えない距離じゃないです。
それに……俺もクロエさんも、そばにいる人に片思いをずっとしてきたじゃないですか。
両想いの一年や二年、どうってことないですよ」

「そうだけど……」

「お願いします。行ってきてください」