「こんなに買ってきてくれたのー?
ありがとうクロエ!いい子ー!」


今日も10cmヒールに赤い靴底でやってきた瑤子さんは、お土産の和菓子とパンを見て、少女の様に可愛くはしゃいだ。
やっぱり瑤子さんはエネルギッシュでチャーミングだ。

ちぃちゃんは海に行っている間、瑤子さん預かってもらっていた。
少し離れていただけなのに、ちぃちゃんはすごい勢いでクロエさんに飛び付いた。


「はい、私からもお取り寄せで買った美味しいワインのお裾分け。
アオイちゃんと二人で飲んでね」

「ありがとう、瑤子さん」

「酔っ払ってもアオイちゃんに変な事しちゃ駄目よ、クロエ。
いくら同じ屋根の下だからって」

何も言い返さず、クロエさんはお茶の準備をしにキッチンへと向かった。
否定なり何なりして欲しいけれど、クロエさんらしい。

瑤子さんはソファーへ座ると満面の笑みを浮かべた。

「アオイちゃんも、ありがとう」

「え?ありがとう?」

和菓子もパンも買ったのはクロエさんで、お礼を言われるような事は何もしていない。

「クロエが変わったから」

「……変わった?」

「クロエの顔がちょっと、ゆるんだなぁと思って。
わかりづらいだろうけど」

「でも、別に自分は何もしていないですよ」

「ううん、きっとアオイちゃんの影響だと思う。
あの子、本当は海って苦手なのよね」

「え?海が、苦手……?」

海で撮影をしようと言い出したのは、クロエさんだったのに。