一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「言わないなら、オレはまた勝手にするけど」

「勝手にって……」

「今日はなんだか強気みたいだし、言えるよね」

クロエさんはそう言いながら身体を重ねていく。

「酔ってるんで、今日はやめましょう……」

「あれだけ酔ってないって言った癖に、今頃?
狡いのはアオイだよね」

「狡くなんて………」


「狡いよ」


耳元でそう囁くと、音を立てて耳に口づけをした。

少し触れる唇に大きく響く音、いつものシトラスと煙草の混ざった香り。
それだけで小さく息が漏れた。

「今日はやめましょう」と言った癖に、自分の身体はしっかりと順応する。

クロエさんは小さく笑い声を漏らすと、さっきよりも音を立てて、二度目の口づけをした。
そのまま唇は輪郭に沿って耳を這い、這う度に何度も口づけをした。

唇がほんの少し開いたり、ほんの少し息がかかるだけで身体が反応する。

漏れてしまう声を聞かれたくなくて手の甲で口を抑えると、すぐにその手を外された。

それでも必死で堪えていると、急に(くび)れを撫で上げられて、自分の声じゃない様な甘ったるい声が出た。


やっぱり狡いのは、いつだってクロエさんの方。

何をしたらどう反応をするのか、全部全部、わかってる。