一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

クロエさんは長い溜息を()くと、頬に優しく手を当てた。

「アオイがいるのに、他所(よそ)でああいう事はしない」

「だけど、それはクロエさんの自由で……」

それ以上しゃべらないで、という様に、クロエさんは自分の人差し指を俺の唇に当てた。

「そうだね。でもオレはしない」

そのまま人差し指で唇をなぞられると、胸の奥が締め付けられた。


ちぃちゃん()じゃないから、クロエさんが他所で何したって、自分にはわからないのに。


カイトさんに似た身体の俺がいるのに、わざわざ他所でしない、という意味なのか。
俺に失礼だから他所ではしない、という意味なのか。

どういう意味なのかは、はっきりわからない。

でも、もう細かい事は良い。

気になっていた事はわかったから。

自分に触れる指も、すごく気持ち良いから。



「クロエさんの連絡先……教えてください」

「ああ、そういえば言ってなかった……」

こんなに緊張しながら連絡先を交換したいと言ったのは、初めてだった。

「今日は言えそうだね」

「……言えそう?」

「して欲しいこと」


やっぱり、クロエさんは狡い。

こういう時にいつもより口角を上げる。