一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「……海って、良いですよね」

「良かった。アオイ、海好きなんだ。
車で行こうと思ったけど、酔ったりする?」



「………え?」



「え、って……何、その顔……」

「……俺が一緒に、海に行くんですか?」

「そうだけど」

「そう、ですか……」

どんな人だろうと思っていた相手が、自分なんて………。

「さっき言いかけた事もそうだけど、何か勘違いしてる?」

「……いえ」

「ちゃんと話して」

クロエさんの細い指が力強く手を握る。

「アオイ」

ほんの少しだけきつい口調で名前を呼ばれると、もう隠せないと思った。

せめて視線を逸らしたいのに、クロエさんの瞳に捕えられて逸らせない………。

「………家を空けていた間、誰かとああいう事を…していて……。
その人と……海に行くんだと思っていたんです……。
まさか自分が一緒に行くとは思っていなかったんで……」


全てを正直に言うと、なんだかとても恥ずかしくて、消えたくなった。

会っていない間も、自分がいちいち意識していたみたいで。