一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

家を空けている間は、ああいう事を……海に行く人としていたんだろうか。

もしくは、それ以上の事を……。

「……アオイ、なに考えてるの?」

クロエさんが顔を近付ける。

「家を空けていた間って、誰かとああいう……」


しまった。

これは自分が立ち入る事じゃない。
完全に、クロエさんのプライベートの事だ。


「誰かと?」

「……朝方まで、どう過ごしていたんですか」

「夜景撮ったり、カフェ行ったり」

「一人で……?」

「一人だけど」

瞬きは、しなかった。
その人と一緒にいたわけじゃないのか……。

そうだ、律さんからの伝言を伝えなきゃいけないんだった。

「今日、律さんに偶然会って海の話を聞きました」

「ああ、律から……」

「お土産はご当地ビールが良いそうです」

クロエさんは眉間に皺を寄せ、髪を撫でる手を止めた。

「どうして重い物を……」

「……海、行くんですね」

「海で撮影したくって」

そう言って少しだけ口元を緩め、また髪を撫でる。


どんな人なんだろう。

クロエさんのそういう相手は、想像するのが難しい。

その人の前では、笑うのかな。
クロエさんが海に行くっていうのは少し意外だけど。