一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「もう一杯、飲んで」

そう言って、また水を差し出してくる。
契約した時と同じ状況だ。

クロエさんだって飲んでるのに、どうして酔ってないんだろう。
多分、俺よりも飲んでる。


「……酔いつぶれない、って前に言ったでしょ」

「いま思っている事、口に出てました?」

「顔に書いてある。
でも、ちっとも酔ってないってわけじゃないよ」


そう言われると、いつもと少しだけ口調とかが違う気もする。
でも、それは俺の勘違いかもしれない。

だって自分には、クロエさんがまったく掴めないから。


「……水、ちゃんと飲みました」

「飲んだね」

子供みたいに報告すると、子供みたいに撫でられた。

今日の自分は、言動も扱われ方も子供だ。
今だってきっと、ばつの悪い子供みたいな顔になってる……。

それを誤魔化したくて横になると、隣に座るクロエさんと目が合った。

「説明……してくれるんですよね」

「するよ」


クロエさんは髪を()かす様にゆっくりと撫でる。