一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

目を強く瞑ると真っ暗になって、水を飲み込む音が小さく聞こえた。


恐る恐る目を開くと、クロエさんは呆れた顔をして、こっちを見ていた。


()けれないって、どれだけ酔ってるの」

「……酔って、ないです」

「酔ってる」

「酔ってない!」


また大きい声を出してしまうと、クロエさんは口をちょっとだけ開いて固まった。




―――最低。




前はクロエさんが自分自身にそう言っていたけれど、いま最低なのは間違いなく、自分だ。

酔ってるのは事実で、介抱してくれてるだけなのに。

自分はなんて学習能力がないんだろう。

いったい自分はどうしたいんだろう。





「……ごめん」



―――先に、クロエさんが謝った。


なんで。

なんで、悲しそうな顔するの。

そんな顔させたかったわけじゃない。



「ちゃんと聞かれた事は全部、説明するから。
だから水、飲んで」

「………するの?」

「するよ」

「本当に?」

「本当」

「絶対?」

「絶対」


うっかり、敬語じゃなくなっていたし、子供染みた話し方になっていた。
だけどクロエさんは気にする様子もなく水を差し出したから、起き上がって受け取った。

水を流し込むと、身体は少し楽になった。