一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

少しするとクロエさんの立ち上がる気配がして、その気配は自分から遠ざかっていった。


ああ、そうだよね。

こんな状況から、逃げたいよね………。


なんで自分はクロエさんの前だと、こうも感情が爆発するんだろう。

普通に聞いたら良かったのに。
「何かありましたか。忙しかったんですか」って。

こういうタイプの人間じゃなかったのに。
いつだって感情を隠して、うまくやってきた。


クロエさんに、日に日におかしくされてる。

二回も泣いて、抱き締められたら安心して、馬鹿みたいに夜中に何度も何度も車を確認して。

ここでの毎日は、時間の流れがゆっくりで穏やかで、短い期間で自分は何か勘違いをしてしまったのかもしれない。

茉莉香の事でおかしかった時と違う意味で、おかしい。


一緒におかしくなろうって言ったのはクロエさんなのに、自分だけがおかしい。


クロエさんに他の人がいたから嫌だった?

クロエさんも自分みたいに苦しんでなきゃ嫌だった?


………そういうわけじゃない。

でも感情の整理がつかなくて、もう全部めちゃくちゃだ。
何もわからない。