一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「全然、大丈夫です。
まだ飲みたいです」

本当は大丈夫じゃない。
視界はふわふわしてるし、体温も上がってる。

だけど、反発したくなった。

「……じゃあ次で最後」

そう言ってクロエさんは最後の一杯を作り始めた。

そういえば、ちぃちゃんにおもちゃを買ったんだ。
葡萄色のソファーの近くで寝転がるちぃちゃんにおもちゃを差し出すと、ちぃちゃんはおもちゃに勢いよく飛び付いた。
良かった、気に入ってくれた。
でも今更気づいた。
この家に、この魚の形のぬいぐるみは可愛すぎた……。
そんなに派手な色じゃない物を選んだつもりだったけど、それでもこの家の中では目立つ。

もっとシンプルな物にすれば良かったと後悔していると、背後に立つクロエさんの影が被さった。

「それ、買ってきてくれたの?」

「……すいません」

「どうして謝るの」

「家の雰囲気に合わなかったな、と思って……」

「良いよ。ちぃちゃん喜んでるし」

そう言って、優しい眼でちぃちゃんを見つめた。

「ありがとう」

「いえ……」

そのまま2人でソファーに座ると、クロエさんは白色のグラスを差し出した。

「これで最後」

「なんてカクテルですか?」

XYZ(エックスワイズィー)

「変わった名前ですね」

「今夜はこれで終わり、って意味」

初めて飲んだXYZはさっぱりしていて最後の一杯にぴったりだった。
きっとクロエさんには酔っている事はバレていて、アルコールの割合がとても低く作られている……。

それでも自分の身体は限界がきたみたいで、倒れる様にソファーに横たわってしまった。


「やっぱり」


クロエさんはそう言うと、また頬に触れた。

頭はぼうっとしているのに、クロエさんに対して言いたいことだけは嫌になるくらい明確に覚えてる。


「―――(ずる)い」