一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「モヒート、飲む?」

頷くと、クロエさんはすぐにミントいっぱいのモヒートを作ってくれた。
口に含むとキリリとした酸味と、スッキリとした香りでいっぱいになった。

あっという間に飲み干すと、クロエさんが二杯目を差し出す。
二杯目は一杯目よりもライムが効いていた。

「……あ、禁酒」

二杯目を半分ほど飲んでから、やっと気付いた。
クロエさんは何も言わずに意地悪く口角を上げた。

「もしかしてクロエさん気付いてました?」

「……もう、いいんじゃない。今夜は」

「じゃあ……禁酒は明日から」

そう言って二杯目を飲み終えると、クロエさんは三杯目にエメラルド クーラー、四杯目にジントニックを出してくれた。
クロエさんが作るカクテルはどれも美味しかった。
喉が渇いていた事もあり、いつもより早いピッチで飲んでしまう。

多分、クロエさんへの苛立ちが完全には消せていなかった所為もある。

クロエさんは俺が話して欲しい事については何も言わないままで、いつも通り。
そうされると、自分から聞くのもなんだか悔しい。


どうしよう、だんだん腹が立ってきた。


「もう飲まない方が良いんじゃない?
顔、赤い」

そう言って表情を変えずに頬に触れてくる。

ほらね、やっぱりこうだ。