一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

突き放す様に家を出た事や、この2日間の事はなんだったんだろう。
そう思うくらい、今日は何も変わりない。


俺はずっと、いろいろと考えていたのに。


―――狡い。


「………姫野さんの家にPC持って行ったら、もう少しかかる事になって、そのまま預かってもらったんです。
でも翌日にはもう直ったって連絡をくれて、取りに行ったらライム達がすごく歓迎してくれて。
姫野さんってすごいですね、PCの速度すごく上がりました。
今度一緒にボルダリング行くことになったんです」


つい、しゃべり過ぎた。
それも早口で。

でも、何事もなかった様に接するクロエさんを見ていたら止まらなくなった。


「そう。お腹、すいてる?」

「少し……すいてます」

「座って」


やっぱり、こうだ。

クロエさんはペースを崩さない。
気持ちをかき乱されているのは、いつだって自分だけ。



ダイニングテーブルに着くと、ちぃちゃんが喉を鳴らしてすり寄って来た。
思わず「よかった……」と口にすると、クロエさんと目が合った。

つい、目を逸らしてしまう。

「……一昨日も昨日も、帰って来た時に避けられたんです。
嫌な顔されちゃって」

「多分、ヒメのところのライム達の匂いのせい」

「そうか、ちぃちゃんからしたら浮気されたというか……。
良い気分はしないですよね」

小さくため息を()くと、クロエさんがガラスの器を差し出した。
中には新鮮なミントの香りがするミントチョコのアイスクリームが盛られていた。