一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

ペットショップへ着いてから、本を買い忘れた事に気が付いた。

おもちゃはすごい品数で、何を買ったら良いのか見れば見るほどわからなくなった。
困っていると、店員さんが魚の形をしたぬいぐるみの様な商品を、一番人気だと勧めてくれた。
何が良いか悪いかもわからないので勧められるままに買って、お店を出た。

そういえば一昨日も昨日も、家に帰った時、ちぃちゃんは嫌な顔をして近寄ってくれなかった。
今日は撫でさせてくれるんだろうか。

気まぐれさが、可愛くもあるけれど。





玄関を開けるとキッチンの方から爽やかなミントの香りがした。
芳香剤などではなく、もっと新鮮で瑞々しいミントの香り。


「……おかえり」

キッチンに立つクロエさんは、目を合わせてそう言った。

いつもは家で待つ自分が言う「おかえりなさい」を初めて言われた。

伏し目がちに中指と薬指で持った煙草を消すと、ゆっくりと視線を上げる。
その瞬間、また目が合った。


―――2日ぶりのクロエさんだ。


「PC、直った?」

「……はい」

「そう」

「……姫野さんも猫、飼ってるんですね」

「ああ、ライムとレモン…」

クロエさんはいつも通りに、ただ淡々と話す。