一夜の過ちは一生の過ちだった 【完】

「ハッピーアイスクリーム、知ってるんだ?」

「はい……これってローカルルールなんですか?」

「僕の周りは知らない人の方が多いかも。
アオイちゃんは何で知ってるの?」

「多分、小説か映画で知ったんですよね。
あ、思い出した……」

姫野さんと同時に、同じ小説の作品名を口にして「ハッピーアイスクリーム!」と同時に言って笑った。
笑っていると、ここに来るまでのモヤモヤとした感情は少しずつ軽くなっていった。

「そういえばアオイちゃん、何かお礼させて欲しいって言ってたじゃない?」

「はい、何でも言ってください。
あまり高い物は難しいですけど……」

「まさか。年下の女の子にたかったりしないよ。
律くんだったら回らないお寿司とか言いそうだけど」

姫野さんは今日も爽やかに笑う。

「良かったら、ボルダリングに付き合ってくれない?
この前、アオイちゃん興味あるって言ってたよね」

「はい、やってみたいです!
初めてだから、自分がどれくらい出来るのか未知ですけど」

「子供も来てるし、いろいろなコースあるから楽しめると思うよ」

日程は、クロエさんに撮影が入らないか確認をしてから決める事にした。

だけど、撮影は入るんだろうか。

はっきりと何かを言われたわけじゃないけれど、それでも不安になる。