「……ルヴェルグ兄様!」

現れたのはルヴェルグだった。公務の途中で抜け出してきたのか、皇帝の証でもある紫色のロングマントと紋章の指輪を嵌めている。

ルヴェルグは堂々とした足運びでクローディアとリアンが座る椅子の横に立つと、片膝をついたベルンハルトを穏やかな眼差しで見下ろした。

「ベルンハルト公子が来ていると聞いたから、顔を見に来たんだ。…元気そうで安心したぞ」

「嬉しいです。陛下自ら会いに来てくださるなんて」

「そなたは我らの家族同然なのだから、当然のことだ」

皇帝と忠臣の子息の会話というより、まるで家族がするような会話が広がる。笑みを浮かべながら聞いていたリアンだったが、時間が経つにつれて瞬きの回数が多くなっていった。

「末の弟君は元気か? 最後に会ったのは歩き始めた頃だったのだが、もう走り回っているか?」

「ええ、それはもう元気に。お話ができるようになりましたよ」

「近いうちに連れてきてくれ。…ラインハルトの奴め、何を聞いても“元気ですよ”としか言わないうえ、頼んでも連れてきてくれないからな」

「ふふ、父は過保護なので。今度僕が連れてきますね」

どうやらベルンハルトには何人か兄弟がいるらしい。話の内容から、一番下の兄弟はまだ幼いことが伺える。歳の離れた兄弟がいることに驚いたが、リアンにはそれ以上にびっくりしたことがあった。