甘くてこまる




ほっと息をつく。
よかった、優しそうな人だ。

さっきは、警戒してしまってごめんなさい、と心の中で謝った。




「まあ、お互いさまやしな。オレも、キミのこと知らんし。――話戻すけど、どこの事務所の子なんやっけ?」

「……っ、え」



これは。
からかわれているんだろうか。


一瞬、身構えたけれど、相馬さんは大真面目な顔をして首を傾げる。




「オレ、けっこう顔広い方やと思ってんねんけど、キミのことは初めて見た。最近業界入りしたとこやったりする?」

「い、いえ、わたしは芸能活動とは無縁です! 今日はたまたまここに、荷物を届けにきただけで」



「……へ?」




事実を伝えただけなのだけれど、相馬さんは、まるで予想外といった様子で口をあんぐりと開けた。


それから、疑るように、わたしにずいっと顔を寄せて。




「今、芸能活動してないって言うた?」

「は、はい」

「一般人ってこと?」

「見ての通り……!」



頭のてっぺんから、つま先まで。

郁がまとっているようなキラキラオーラの片鱗さえもない、ごくごくふつうの、一般女子高校生だ。


相馬さんは、数秒押し黙ったかと思えば、薄く唇を開いて。




「いやいや、もったいな……」