「そうかー、知らんかー、オレのこと。これでも最近、メディア露出増えてきたと思って喜んでたんやけどなー」
わざとらしく肩を落とした彼は、わたしをジト目で見つめて、ようやく名乗ってくれた。
「相馬 梓。最近はモデル中心に、タレント活動してるけど、もともとはSNSに写真とか動画上げとって――まあ、平たく言うとインフルエンサーってやつやな」
相馬 梓さん。
改めて名前を聞いて、インフルエンサーだと知ると、やっぱりどこか既視感があるような――――あっ。
思い出した。うみちゃんだ。
筋肉マニアで上裸に目がないうみちゃんが、「この腹斜筋……!理想なんだけど!」と見せてくれたショート動画に映っていたのが、今目の前にいる相馬さんだったんだ。
どうりで、どこかで見たことがあると思ったんだ。
「オレの知名度もまだまだってことやな。インスタのフォロワー50万人で浮かれてたんが、あほらしいわ」
「すっ、すみませんっ。わたし、失礼なこと……」
悪意がなかったとしても、芸能を仕事にしている人に「知らない」なんて。傷つけてしまったに違いない。
青ざめるわたしに、相馬さんはけろりとした顔で。
「ええよ。このレベルで調子乗ったらあかんて、よーわかったわ。逆に、感謝せなな」



