甘くてこまる



関西なまりの独特なイントネーションでたたみかけられて、その勢いに負けて、思わず後ずさる。


あからさまに距離を取ってしまったわたしに、彼は「そんな警戒せんとってーや」とくすくす笑って、肩を揺らす。


それから、神妙な面持ちでわたしの顔を覗き込んだ。




「もしかして、ぴんと来てへんのか」

「……?」

「まさかやけど、オレのこと知らへん?」




質問がおかしいよ。

だって、そんな聞き方、まるで「わたしが彼のことを知っていて当然」みたい。


……ということは、つまり?




「どこかでお会いしたことが、あるんですか……?」




わたしが一方的に忘れているんだとしたら、こんなに失礼なことってない。

びくびくしながら口を開いた、けれど。



わたしの発言は全く的外れだったのか、彼はズコーッと効果音が聞こえそうな勢いでずっこけた。


さすが、なにわの人。
身のこなしは新喜劇に勝るとも劣らない――なんて感心していると。