甘くてこまる




後ろから、声がした。



驚いてぱっと振り向くと、そこにいたのは、長身の男の人。


赤茶色の髪と、シャープな目尻の猫目が印象的。

どこかで見たことがあるような、ないような……。





相馬(そうま)くんの知り合いだったのか」


「そー。せやから、スタッフパス持ってないみたいやけど、今回限りは見逃したって」


「ああ。相馬くんが言うなら、もちろん」





戸惑っているうちに、なぜか話は進んでいて。

あれよあれよという間に、ガラス張りのビルの中にいた。



警備員さんにあんなに足止めされていたはずが、一瞬で。





「あの、あなたは……」





“相馬くん” と呼ばれていた彼を見上げると。

彼の瞳はわたしにまっすぐ向けられていた。

興味津々といった様子で、キラキラ輝く瞳。





「えらいかわいい子やなあ」


「ふぇ……っ?」


「どこの事務所なん? アイドル? それともモデル?」