♡
𓐍
𓏸
電車に揺られること数十分、たどり着いた都内某所。
どーんと目の前にそびえ立つ、ガラス張りのビルを見上げて、立ち尽くす。
「こ……、ここだよねっ?」
郁ママに教えてもらった、スタジオの住所をマップアプリに入れて、何度も見比べる。
大丈夫、たぶん、間違いないはず。
だけど。
「ど、どうすればいいのかな……」
とにかく大きいビル。
扉もたくさんあって、入口がどこなのかもよくわからない。
おまけに警備員さんもたくさんいて、さらになんだか空気がキラキラしていて。
威圧感があって、ちょっと怖い。
ううん、怖気づいている場合じゃない。
わたしの使命は、郁に、この鞄を届けること!
それが終われば、すみやかに帰宅……!
よし、と気合いを入れて、いちばん近くの警備員さんに声をかけた。
「あの、忘れ物を届けにきて。中に入りたいんです」
「忘れものォ? いったい誰に?」



