甘くてこまる




「そう、だね……?」




言葉の意味も噛み砕かないまま、あいまいに頷いてみせると郁は「はー……」と熱っぽい息を吐き出して。

それから、なんとも恨めしそうな瞳をわたしに向けた。





「せーらばっか平気な顔してんの、ずるいんだけど」





心あたりのないことで責められて、ぱちぱちと瞬きを繰り返す。

そんなわたしを見つめて、郁はまた、はあっと息を吐き出して。




「ばか素直に目閉じたりするから、こっちは心臓おかしくなってんのに、不公平じゃん、こんなの」

「ふぇっ? それは、郁が『目、つむって』って言ったから……」

「そういうところが無防備だって言ってんの」





なぜか不服そうにした郁は、背中を丸めて額をこつんとわたしのおでこにぶつけた。





「せーら、今どういう状況かわかってる?」

「ええと……」





改めてきょろきょろと見回して。

郁の膝の上に乗ったままだったことを、ようやく思い出した。





「ご、ごめんっ、重いよねっ?」





わたわたと降りようとすると、郁は呆れたように息をつく。

それからじたばたするわたしを引き留めるように、腰にぐっと腕を回して固定して。





「せーらはさ、俺のこと何だと思ってるの」