「取れた……?」
「ん。もうだいじょーぶ」
口についたクリームを拭うのに目を閉じる必要ってあるっけ、と遅れて疑問に思いながら、瞼を開ける、と。
「わ、近……っ」
目と鼻の先に郁の顔。
慌てて離れようとしたけれど、それを許さないとでも言うように、郁の腕がわたしを抱え込んだ。
それから、おそらくわたしの唇から拭い取ったクリームがついた親指を、ぱくんと口に含んで舐めとる。
赤い舌がちろりと覗く色っぽい動作も、郁だから、サマになっていて。
じーっと、思わず見つめてしまう。
吐息がかかりそうな至近距離、わたしの視線を受けて郁はぼそっと呟いた。
「簡単にキスできそーな距離」



