ようやくマドレーヌを飲みこんだわたしは、思わず満面の笑みを浮かべて。
「やっぱり、郁ママのマドレーヌ、美味しいねっ」
「今も変わらず、せーらの大好物?」
「うんっ、だいすき!」
こくっと頷きつつ、思ったままに放った言葉に、なぜか郁は「ごほっ」と咳き込んで。
それから少し頬を赤らめたかと思えば、1秒後には眉間になぜかシワを寄せている。
その見事な百面相っぷりに、わたしは首を傾げた。
「郁?」
「……いやー、ううん。普通に妬けるなってだけの話」
「やける?」
「親が作ったお菓子相手にとか、どうかしてるとは思うけど」
「……?」
困惑するわたしの頬に、ふに、と指を沈めてしばらく弄んだ郁は、それからなにやら箱を取り出してきて、わたしに差し出した。



