思考をめぐらせているうちに、ふとママとの会話を思い出す。 もしかして、と半信半疑の仮説を紘くんにそのままぶつけてみた。 「紘くん、好きな子、いるとか」 口にして、ないな、と思う。 そんなわけないよね。 だって紘くんって、わたしたちと話しているか、碁を打っているかの二択で、とてもそういうことに興味があるようには見えない。 たかをくくっていたわたしの顔を、紘くんが伏し目がちにのぞきこんで、薄い唇がそっと開いて、いつでも正直すぎる言葉を紡ぐ。 「いる」 「……っ、えっ?」