甘くてこまる




「普通に、わかる」

「普通じゃないよ」





ぱたん、とあの分厚い本を閉じる音がする。

それから、紘くんが近づいてくる気配。





「ちらちら見えて、気になって仕方なかった」





下駄箱の向こうから現れた紘くんは、屈んで、わたしのツインテールをつまみ上げた。



毛先が、見えてたってこと……?

でも、たったそれだけでわたしだって確証持てる?



ハテナばかり浮かべていると、うみちゃんがわたしの肩をとんとんと叩いて。





「私、この後マネージャーのミーティングあるから、もう行くね。ばいばい」

「わ、わかった、ばいばいっ」




うみちゃんがぱたぱたと駆けていって、紘くんとふたりきりになる。

紘くんは、そうっとわたしのツインテールから手を離した。