甘くてこまる




「ああ」




頷いた紘くんは、「この話は終わりだ」と言わんばかりに、視線を本に戻す。

女の子はあからさまに傷つき裏切られたような顔をして、吐き捨てる。





「なにそれ、酷い」





興がさめた様子で、彼女は紘くんをキッとひと睨みして、踵を返す。それから、つかつかとこちらに向かってくるから。


偶然とはいえ、一部始終を見てしまった罪悪感にさいなまれて、そろり、1歩後ずさると。





「ね、言ったでしょ、能面なんだって」

「わぅっ、うみちゃん……!?」





とん、と背中があたったのは、なんとうみちゃんの体だった。



能面っていうか……、たしかに、いつもの紘くんと比べると、さっきのは本当の “無” 表情だったけれど。


わたしが気になるのは、それよりも。





「あれって、告白、だよね?」

「それ以外の何に見えたの」

「わたし、紘くんが告白されるとこ、はじめて見た……」