「そうだ、せーら。いっくんとこに、コロッケ持って行ってくれない?」
思い出したように、ママはキッチンからタッパーを持ち出してきた。
中には、コロッケがぎっしりつまっている。
「お夕飯用に作ったんだけどね、ほら、いっくん、昔からうちのかぼちゃコロッケ好きじゃない? だから、多めに作ったの。
いっくん最近忙しいみたいだし、たくさん食べて力をつけてもらわないとって思って」
それにしても作りすぎでしょ……ってくらい、ずしんと重いタッパー。
ママにほら行った、と背中を押されて玄関を出る。
3秒で郁の家の前に到着。
ピンポーン、とインターホンを鳴らすと。
「わあ、せいらちゃん! あら〜、久しぶりね。相変わらずかわいい〜!」
玄関の扉からひょっこり顔を出したのは郁のママ。
にこにこ、ふわふわした雰囲気も、目元も、全体的に色素のうすい感じも郁に似ている。
……じゃなくて、この場合は、郁の方が、郁ママに似ているって言うのが正解か。



