「紘くんは、大好きな幼なじみ、それ以外ないよ」
「えー、つまんなーい、もったいなーい。ママがせいらだったら、紘くんのこと早々に捕まえて離さないのにー。かっこいいし、落ち着きもあって将来も有望! 昔から何かとせいらのことを気にかけてくれてるし」
ママがなにやらぶつぶつ言っているけれど、右から左に聞き流す。
好き勝手言われても、紘くんだってきっと困るよ。
聞いたことはないけれど、紘くんにだって好きな子がいるかもしれないし……。
つけっぱなしのテレビ、芸人さんがわいわいがやがや繰り広げるトークショーをぼんやりと眺めていると。
「それか、もしかして、いっくんの方だったりして」
「……っ?!」
思わぬふいうちに、ドサッとスクールバッグを取り落としてしまう。
ママはにま〜っと意味深な笑みを浮かべて。
「そっかあー、せいらはいっくん派だったかー」
「やっ、やめてよ! そういうのじゃないってば!」
ぶんぶんと首を横にふって強く否定する。



