甘くてこまる


𓐍
𓏸



「わあっ、すごい!」

「でしょ」


「なんで郁がそんなに得意気なの……」

「だって言ったじゃん。いい場所知ってるって」



各駅停車の電車に揺られること40分。

知らない名前の駅で、郁に腕を引かれて電車を降りた。



その駅で降りたのは、わたしたちふたりだけで。

少しの心細さを覚えるわたしをよそに、郁は迷いなく並木道をずんずんと進んでいって。

導かれるようにたどり着いたのは、湖のほとり。




「きれい……」



太陽の光が水面に反射して、キラキラと輝いている。
透き通るようなきらめきは、まるで宝石を埋め込んだみたい。


目を輝かせるわたしに、郁はどこか満足気だ。




「気に入った?」

「うんっ」




木々に囲まれたこの場所には、今、郁とわたしのふたりきり。


静かでひっそりとしていて……たしかに、ここなら、郁と一緒にいても騒ぎになることはなさそう。




「ほら、思う存分、写真撮りな」




郁に促されて、カメラを起動させて、レンズキャップをはずす。

ファインダーを覗き込んで──。



カシャッ、と静謐な空間にシャッター音が響き渡った。




「どう? 撮れた?」




撮れたてほやほやの写真を確認していると、郁が手元を覗き込んでくる。



「うーん……」