♡
𓐍
𓏸
「ふわ……」
いつもより2時間も早く起きたから。
盛大にあくびをこぼしてしまった。
……いけない、いけない。
眠たい目をこすりながら、鏡のなかのわたしとにらめっこする。
気合いを入れて、普段よりちょっと高い位置できゅっと結わえたツインテール。
おろしたてのまっさらな制服。
細いリボンを胸もとで蝶々結びにしたら。
「よしっ」
いい感じ。
でも、うーん、まだ何かが足りない気がするかも……。
そうだっ!
「リップも塗っちゃおーっと」
この前買ったばかりの、薄づきのピンクリップを唇に乗せてみる。
わぁ、ちょっとお姉さんっぽいかも。
高校生っぽいかも。
なにしろ、今日は高校の入学式なんだもん。
記念すべき新生活の始まりなの、ひと肌脱いで新しいわたしになりたいの。
鏡で最終チェック、手ぐしで前髪を整えて。
玄関に向かう────前に。
部屋の窓をカラカラ開けて、靴下のまま、そうっとベランダに出る。
よいしょ、と柵を乗りこえて、間違っても落ちてしまわないように慎重に、数十センチの隙間を飛び越えて。
隣の家のベランダに侵入成功。
……やっていることは、不審者と一緒、なんだけど。
「郁」
𓐍
𓏸
「ふわ……」
いつもより2時間も早く起きたから。
盛大にあくびをこぼしてしまった。
……いけない、いけない。
眠たい目をこすりながら、鏡のなかのわたしとにらめっこする。
気合いを入れて、普段よりちょっと高い位置できゅっと結わえたツインテール。
おろしたてのまっさらな制服。
細いリボンを胸もとで蝶々結びにしたら。
「よしっ」
いい感じ。
でも、うーん、まだ何かが足りない気がするかも……。
そうだっ!
「リップも塗っちゃおーっと」
この前買ったばかりの、薄づきのピンクリップを唇に乗せてみる。
わぁ、ちょっとお姉さんっぽいかも。
高校生っぽいかも。
なにしろ、今日は高校の入学式なんだもん。
記念すべき新生活の始まりなの、ひと肌脱いで新しいわたしになりたいの。
鏡で最終チェック、手ぐしで前髪を整えて。
玄関に向かう────前に。
部屋の窓をカラカラ開けて、靴下のまま、そうっとベランダに出る。
よいしょ、と柵を乗りこえて、間違っても落ちてしまわないように慎重に、数十センチの隙間を飛び越えて。
隣の家のベランダに侵入成功。
……やっていることは、不審者と一緒、なんだけど。
「郁」