だけどその冷たさはかつては存在していなかったはずだ。


見た目で近づいてきて、理想と違うと突き放される。


そんなことを繰り返されているうちに出来上がってしまったものだ。


私が抱きしめて、抱きしめて、抱きしめて、抱きしめ続けて、やがてその氷が溶けたらいいな。


なんて。


「溶けるかな、俺の氷」


「溶けるよ、絶対に」


私はそっと手を伸ばして西原くんの手を握りしめる。


それは氷のような冷たい手ではなく、ちゃんと血の通った暖かな手だった。


「そっか。じゃあとりあえず、平井さんの前だけではそうあるように頑張るよ」


「え?」


「リハビリだよ」


みんなの前で表情を取り戻すためのリハビリ。


それはなんて辛いことだろう。


だけど彼が今私のとなりで笑ってくれるなら、私も手を取り合って頑張りたい。


彼のことを絶対に見捨てない。


握り返された手が、指先に絡んできて一瞬とまどう。