とにかく謝って気を鎮めてもらわないと。


私が謝る必要なんてなにもない。


そう思いながら口を開こうとしたときだった。


「平井さんの言う通り、猫にミルクをやってただけだ」


後ろからそんな声が聞こえてきて振り向いた。


そこに立っていたのは氷王子の西原くんだ。


私は驚いて目を丸くする。


西原くんが自分から誰かに話しかけたところなんて、見たことがなかった。


他のみんなもそうだったのだろう。


一様に驚いた表情を浮かべて言葉を失っている。


「俺は偶然その場に居合わせた。それのなにが悪い?」


低く、人に意見を挟ませない言い方にまたその場が凍りついていくのを感じた。


田中さんは振られたときのことを思い出したのか、うろたえたように後ずさりをする。


「なによ。氷王子のくせに」