「子猫にミルク? なにいい人ぶってんの?」


「そんなんでごまかされると思ってんの!?」


「そうだよ。あんたリエが振られたって知ってんでしょう!?」


リエとは田中さんのことだ。


田中さんは仲間たちの後ろでジッとこちらを睨みつけている。


「ちょっとやめなよみんな」


佑美が慌てて私と田中さんたちの間に身を滑り込ませた。


「今回は佑美の言うことでも聞けないよ。こいつ転校生のくせに最低じゃん」


自分たちの仲間を傷つけた男とふたりで会っていた。


それはそんなにも悪いことだろうか。


そもそも田中さんが振られた原因がなにかったはずだ。


標的が私にされる理由がわからない。


グルグルと頭の中を言葉が駆け巡る。


だけどそのどれひとつとして言葉として出てこなかった。


仲間が少ないこの学校内で、敵を作ることは学生生活の死を意味する。


これから長い間孤独に過ごさないといけなくなるかもしれない。


そう考えただけでも背筋が寒くなった。


それだけは嫌だ。


せっかく転校してまでこの学校に来たのに。