「昨日なにかあった?」


小声でそう聞かれて私は素直に昨日の出来事を説明した。


佑美は呆れたように大げさにため息を吐き出したけれど「西原くんにも悪いところがあったし、すぐに収まるでしょ」とつぶやいて諦めていた。


一瞬昨日の放課後見たことも佑美に伝えてみようか。


そうすれば氷王子なんてあだ名も変わってくるかもしれない。


そう思って口を開きかけたけれど、次の言葉が出てこなかった。


どうしてだか自分でもよくわからないけれど、あれは自分だけの秘密にしておきたいと思ってしまった。


「どうしたの?」


口を開けたまま止まってしまった私を見て佑美が首をかしげる。


「ううん、なんでもない」


私は慌てて作り笑いを浮かべたのだった。