「いいかしら、千鶴。貴女は絶対に私が決めた相手と結婚するのよ。」
父は、大地主として有名な小野村家の跡取りとしてお祖父様から家を継いだ。
そして私は、その次期跡取りとして親の決めた相手と婚約をしなきゃいけなくなった。
もう18なのに、自由に恋愛することすら許されない。
幼い頃から毎日学校は送り迎えで、友達と遊ぶ時も若い執事が一人必ず付き添いとしている、そんな状態だった。
私が10歳の誕生日に、同い年の執事見習いがうちにやってきた。
「照沼仁です。今日からよろしくお願いします、和歌様。」
仁は、色白で男の子とは思えない可愛さだった。
彼は私にとって唯一話せる同い年の異性となったのだ。
仁が私に専属で着くようになったのはそれから四年後のこと。
照沼家は、代々小野村家に仕えている。
父の執事である照沼孝明も、仁と同じく10歳の頃に小野村家に仕えるために見習いとして入った。