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次の日の朝。
すずくんが寝坊した。
昨晩、寝られなかったのか、目の下に隈ができている。
元々、目つきが悪いのに今日は一段と鋭くなっていて、機嫌も悪そうだ。
家を出る15分前だというのに、すずくんは焦る素振りもなく、脱衣所の鏡の前でぼーっと立っている。
「すずくん、おはよう」
背後から声をかけると、ビクッと肩を震わせる。
勢いよく振り返り、「……はよ」と小さい声で返してくれた。
すずくんが我が家にやって来た頃は、挨拶しても無視されるか、「…ん」と素っ気ない返しだったが、今ではしっかり(?)返してくれるようになった。
「……」
「??」
すずくんは、瞳孔を開き、じっ…とこちらを見ながら一歩距離を置いた。
すずくんに猫の耳と尻尾が生えている幻覚が見える。
───これはもしや…。
すずくん、私を警戒している…?
全身の毛を逆立てて体を大きく見せる猫の姿が頭に思い浮かんだ。
私、また何かしてしまったのだろうか。
スマホをテレビのリモコンと間違えて持ち歩いていたことに大笑いしたこと?
靴の裏に付着した犬の糞を私のスカートで拭こうとしたすずくんに「きもい」って言ったこと?
それとも───…。



