すずらんに幸あれ!


「せせせ、拙者は歌わん、でござる…」

「あっ、そうなんですね。あまりカラオケとか行かない感じですか…?」

「そそそそんなに近寄らんでもろて…!!せ、拙者彼女がいるので!!」

「えぇ…っ?」


秋山さんは、頬を赤らめながら勢いよく私から距離をとった。

一人称が「拙者」で語尾は「ござる」という点について色々ツッコミたいところだが、あえて触れないでおこう。

しかし、彼の発言に耳を疑った。


「……彼女いるのに、合コンに来たってことですか?」

「だだだ、だって、あの人たちが…。拙者は『彼女がいるから』とお断りしたのに、むりやりカラオケに連れてかれまして…」


挙動不審、早口な喋り方、ボソボソと聞き取りづらい声量。

秋山さんほどではないけど、すずくんもちょっと声小さいんだよね…。

声が小さい所は、すずくんと少し似ているかも…?


「…ってゆーか!彼女さんがいるならちゃんと断らないとだめじゃないですか!」

「『お前の彼女は"人形"なんだから問題ないっしょ』って強制連行されたんでごさるよ…!」

「ん??『人形』??」


首を傾げて聞き返すと、秋山さんは、スマホの画面を私の方へと向けてくれた。