「地図アプリのルート案内が役に立たなかっただけだ」
「ふーん。つまり、方向音痴なんだね」
「ちがうって言ってんだろ」
私からすれば、スマホの地図アプリを使って道に迷うわけがないと思っている。
GPS機能もついていて、現在の位置情報も把握可能で、初めて行く場所でも地図アプリがあれば辿り着けるはずだ。
さすがに海外となると私も迷うかもしれないけども。
「もぉ〜…蘭ちゃん、年下の子をいじわるしちゃだめでしょ?言っとくけど、スズちゃんは蘭ちゃんに変な噂されないように気を遣って30分も早めに時間ずらしてくれてたんだからね!」
「えっ、そうなの?」
「……」
「…っていうか、変な噂って何?」
「何ってそりゃあ、蘭ちゃんとスズちゃんが付き合ってるって思われないようにするためでしょ?」
「……えぇっ??」
母の言葉を聞いて、眉をひそめる。
私とすずくんが付き合っていると思われないようにするため…?
確かに、ストーカー男の前では彼氏のフリをしてもらったけど…。
あっ、でもこの前すずくんにお弁当届けに行った日に誤解されたんだっけ?
でも、騒がれた割にはあまり注目は浴びなかったような気がする。
まあ、別にそこまで考えることでもないか。
「すずくんみたいな男前には、めるちゃんとか橋◯環奈くらいのレベルの女性じゃないと誰も認めないでしょ。そもそも、私とすずくんがそういう関係だなんて、天と地がひっくり返ってもありえない話だよ〜」
やれやれ、と首を横に振って否定すると、母は「そっか〜…」となぜか残念そうに返事をしたのだった。