「はい、スズちゃんのお弁当っ!」

「…ありがとうございます」

「ご飯の量はどう?男の子だとちょっと少なすぎるかな?」

「大丈夫です」


すずくんが我が家で暮らすことになって3日目となった。

そして、すずくんと母の会話をぼんやりと聞きながら、私はこう思った。

すずくん、普通に敬語で話せるんだぁ…と────…。

物凄く失礼なことを考えていると「そうだ、蘭ちゃん」と母が口を開いた。


「今日は…っていうか、これからはスズちゃんと一緒に学校行ってあげてくれない?」

「えっ…」


唐突な頼みに食べかけのトーストをポトッと皿の上に落としてしまう。


「スズちゃん、花岡家に来てまだ3日目だし、この辺の地域のこととか知らないでしょ?それに、昨日お母さんより先に家を出たはずのスズちゃんが家から少し歩いた所で道に迷ってたみたいでね。結局駅まで一緒に行ったんだよね〜、スズちゃん」


母は、私の隣で朝ごはんを食べているすずくんに話を振った。


「へ〜…っ。すずくんってもしかして方向音痴だったりするの?」

「ちがう」


質問をすると、即答で返事が返ってきた。