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次の日の朝、眠たい目をこすりながら洗面所で歯を磨いていると、急に扉の方からガタッと音がして、思わず肩を震わせてしまう。

その後、何事もなかったかのような素振りですずくんが入ってきた。


「…えっと、すずくん。洗面所に入る時は引き戸だよ」


おそらく、押し戸か引き戸かわからなかったのだろう。

私がいることに気づいたすずくんは、ムッとした顔で「知ってる」と言い返してきた。

すずくん、昨日初めて慣れない場所に来たのだから、知らないのは当然のことであり、恥ずかしいことではないのだよ。


「…おい、どけ。邪魔なんだよ」

「あっ、はい…」


鋭い目つきで睨まれ、素直に道を開けてしまう。


「……いや、私年上っ!!!」

「……」


我に返ってツッコむと、すずくんは無視をして、歯を磨き始める。


「んぎぎぎぎぃぃっ!!!」


殴りたい衝動を抑え、乱暴に洗面所のドアを閉めた。


あーもう、ムカつく!
もっと気を遣えるような言い方はできないの!?

『洗面所、使ってもいいですか?』ぐらい言えんのか、あやつは…!!


母から聞いた情報によると、どうやらすずくんは朝は強いらしい。

すずくんが朝強くて正直助かった。

もし彼が朝弱いとなったら、私が起こしにいかなければならなかっただろう。