ただ電柱にもたれているだけなのに、それだけで絵になっていて、イケメンというのはすごいな…と、少し離れた所に立っている彼を見て呑気に感心してしまった。
「今コンビニで食いたいもんねーから、何も奢らなくていい」
「えっ!?何もいらないの!?」
「いらねえって言ってんだろ。その代わり、俺の靴洗え」
すずくんは、ゆっくり足を上げ、靴の裏を私に向けながら真顔でこう言った。
「うんこ踏んだ」
「うんこ踏んだ…!?(復唱)」
突然何を言い出すんだと驚いたが、彼の足下の視線を移すと、茶色い物体が平らに潰れているのが見えた。
おまけに、その茶色の物体には靴の足跡がくっきりとついていて、きっと見知らぬ飼い主が犬の排泄物を回収せずに去って行ったのだろう。
しかし、何故だろう。
犬の糞が靴の裏に付着したにも関わらず、どうして彼はそんな落ち着いた様子でいられるのだろう。
普通なら、もっと憂鬱な気分になったりするはずなのに。
…っていうか、この人今靴洗えとか言わなかった?



