「今からでも遅くはありません。婚約解消を撤回すべきです。彼女は我が国に――――我が王室に必要な女性ですから」





 万が一彼女が力を貸してくれなくなったら――――? 他国に奪われるなんて以ての外だ。

 何としても繋ぎ留めなければいけない存在だというのに。





「分かってくれるのか、ジェイデン!? そうだ。エルビナは間違いなく我が王室に必要な女性だ! だが、事情があって…………ローガンと結婚させることはできない。絶対に、できない。

そこでだ、ジェイデン。

私はお前とエルビナを結婚させようと思っている」



「……は? 私、ですか?」





 思わぬ話の展開に、俺は思わず身を乗り出す。父上は神妙な面持ちで頷きながら、小さくため息を吐いた。





「しかし、宜しいのですか? エルビナは納得してくれるのでしょうか? 俺はあくまで第二王子ですし……」



「もちろん! このことは既にエルビナも了承済みだ。

いやぁ、良かった。お前ならきっと大丈夫。

そうと決まれば話は早い。エルビナのところに行って、彼女と親交を深めてくれ!」