この街で君を拾う

「そろそろお腹空いてこない?」

「確かに。もう13時になってたんだ」

夢中で歩き回っていたらもうこんな時間になっていた。

「よかったら、お礼にお昼ご馳走しますよ」

「そ、そんないいですよ!私こそ、なんていうか、旅行気分味あわせていただいて有難うございます」

日向君といると、楽しいし、なんだか落ち着く。

「俺、今駅前のネカフェに泊まってて、近くに美味しいラーメン屋があって、一緒に行ってくれる?」

「ラーメン好き!行く!!」

私はラーメンが大好物。



日向君の言うラーメン屋に向かうため、また市電に乗り込んだ。

今度は2人並んで座った。

「日向君、ホテルじゃなくてネカフェに泊まってるの?」

「うん、正直な話、観光しに来たんじゃなくて、家出、なんだ」

「家出?なんで?」

日向君の表情が曇ってしまった。

「ごめん、無理に聞かないから」

「ううん、気を使わせてごめんね」

みんな、色々と複雑な事情を抱えているんだな。