どんどん坂を登っていくと、観光客が増えてきた。

人がいる方へ行ってみると淡い水色と薄黄色の大きな建物が見えてきた。

多くの人がそこに集まっていた。

この街に越してきてまだ数ヶ月しか経ってないので、有名な観光地なのに全然知らない。

運動不足のせいで、少し坂を登っただけなのな疲れてしまった。

近くにあったベンチに座って足を休ませる。

坂の下には海があって、何隻かの船が見えた。

そばにある自販機で飲み物を買おうと立ち上がると、先程見かけたボストンバッグの男がいた。

今回は私のことをちゃんと見ているようだ。

しっかり目が合うと気まずい。

何か話しかけてみようか。

「観光ですか?」

彼は少し驚いたような顔をした。

知らない女に声をかけられたのだから、そうなるか。

「はい、そうなんです。この街、どこも綺麗でいいですね」

笑った顔が素敵だった。